理事長のメッセージ
概要
診療実績
患者さんの権利
沿革
一般事業主行動計画
理事長経歴

医療法人牧和会は・・・

牧和会は1963年に全開放の精神科病院として設立されて以来、統合失調症の陰性症状にターゲットを置いた活動療法、家族への治療的アプローチを主眼に置いた家族教室を治療の中心において地域の第一線の精神科病院として活動してきました。

1992年に社会的にも大きな問題となりつつあった認知症の治療のために認知症治療病棟を開設し、1998年に福岡県から老人性認知症センターに指定されました。

1997年には日本医療機能評価機構から精神科病院Aのカテゴリーで日本最初の認定を受け、5年後の2002年にはバージョン4で再認定を受けています。2007年にはバージョン5で3度目の認定をうけました。さらに、2012年にはバージョン6で再認定を受けています。

精神科の治療について

21世紀は脳の時代といわれています。時代の変わり目の真っ只中にあり、複雑化が進み多様な価値観が氾濫する現代社会において、完全に解明されていない脳の活動に対して治療を行い、望ましい効果を挙げるには、どうすればいいのでしょうか。

私は一瞬のひらめきを狙うよりもむしろ地道で平凡なかかわりの積み重ねが有効だと思います。これはどの職種であっても言えることですが、一人のスタッフで行うことはできません。
そこで、チーム医療が必要になります。
具体的には、職種を問わず目標を共有すること、正確な記載と引継ぎをすることなどが重要になります。

治療の方法は治療関係、薬物療法、家族とのかかわりなどが考えられます。また、治療が行われる環境として、制度や社会環境の問題もあります。

どれ1つをとっても簡単なことではありませんが、なるべく薬は少なくして人の力を大事に現場で生きる知識を蓄積し、治療に役立てたいと思っています。

治療と介護について

介護保険の開始以来、何が治療で何が介護なのか、特に制度面から検討がされていますし、現場の職務分担にも関係する重要なことです。
しかし、一人の利用者から見たときに、これは、はっきりと区分できることではありません。法的な部分は守らなくてはなりませんが、各スタッフは利用者の抱えている問題に集中しなくてはなりません。つまり、問題に応じて、チームの中で対応していくことが大事です。

例えば、病気に対しては治療だし、治療の結果残った障害については介護だし、この間をつなぐものとしてリハビリがあります。できれば、維持のためのリハビリもふくめて本人の自立性を奪うような過剰な介護はしないほうがいいと思いますが、家族の要望もありなかなか難しい問題だと思っています。

電子カルテについて

牧和会では普段から院内の電子化に取り組んでいますが、2007年8月1日に自作の電子カルテが稼動しました。

カルテの特徴
牧和会内だけで使える自作のカルテ
1利用者生涯1カルテ
WEBベースのテキスト入力とオーダリングシステム
使いながら改良していくカルテ
牧和会で初めて院内の電子メールが使われた1999年12月24日から、電子カルテ稼動の2007年8月1日まで7年近くかかりました。
実は私はずっと以前からチーム医療を行っていくうえで、診療記録(カルテ)についていくつかの問題を感じていました。

診療情報をチーム内で共有して検討するにはチーム全員が集まって、カルテを誰かが読むしかなく手間と時間がかかること
カルテをあちこち必要な場所に運ぶには手間と時間がかかる
カルテの字が読みにくい場合がありミスにつながりやすいし、確認に手間がかかる

それでもカルテ自体は良く書いていて、手間と時間さえかければかまわなかったのですが、工夫を重ねた情報共有のためのノートやシートは、一つの病棟の分だけでも膨大になり、広げると(追加「畳」)4畳半ぐらいにはなりそうでした。こうなるとノートやシートの記載も整理も大変で何をやっているかわからない感じも出てきました。そういうわけでチームで機能的に動くためになにかいい方法はないものかと思っていました。
とにかく情報がスムースに通るようにという観点から院内にLANのネットワークを引き電子メールと掲示板からはじめました。
そのころ注目し始められていた電子カルテは導入費用が1ベッドあたり100万と言われていました。(注:1)欲しかったけど、とても高くて手が出ませんでした。さらに困ったことに、当時の私にはプログラミングやネットワークに関しての知識がなかったので、いろんな売りこみを聞かされても、その価値が良くわかりませんでした。
仕組みの価値がわからないまま使うというのは大変危険なこと(注:2)で、ベンダーと組んでつくることも一部分でやってみましたが、逆に医療の世界とIT関連の世界はまるで違うということを痛感させられました。
注:1今は少しは安くなっていますが、依然高いと思います。
注:2このことに関しては当時大きな社会問題がおこりました。
某大手IT企業が政府に売り込んだというか政府が買ったシステムがレガシー(伝説的に古い)システムでメインテナンス料や修正料などがとても高価であることがわかり国民全体に大きな不安と怒りを呼びました。
売ったほうは、その世界のビジネスだったのでしょうが、買ったほうはお金があった上にその世界のビジネスを良く知らなかったのではないかと思います。

映画ではないですが、私は、ちょうどジュラッシックパークに迷い込んだ人間のような感じだったと思います。
このIT関連の業界は肉食恐竜が跋扈しているように思われました。さらに使い勝手が今ひとつだからとプログラムを変えるだけで、新たに費用が生じることもわかりました。そして、大手から売られているカルテはとても格好よく見えました。
ちょうどジャンボジェット機のような巨大で完成されたシステムで、最近ではすぐに離陸できそうなものも出てきました。それでも、私が思うレベルで精神科の特殊性に対しては対応が不十分で、逆にあまり必要のない機能もついていて、費用面も含めて職員のいろいろな質改善や効率化の提案を受け入れる余地はなさそうでした。
一方で、コンピューターの性能はどんどん良くなって安くなっていくし、 新技術も次々登場してきます。基本的には技術ですから原理があり、それを理解して使えば費用は最小限ですむはずです。
実際に診療所向けのカルテを自作された吉原先生に入院で使えるようにかえていいかどうか相談してみましたが、入院には使わないで欲しいと断られました。また、大阪で診療所を開業していた高校の先輩である松岡先生がこの吉原先生のカルテを使っておられたので、いろいろ相談したところ、「なら、自分ででつくっちゃえばどうや!」と背中をおしいただきました。
それならと、吉原先生の考えに習って、プロペラのセスナ機のように小型でもいいから、基本機能がしっかりしており、飛びながら改良できるカルテを作ろうと狙いを絞ってやってきました。ライバルは売り上げ数兆円で世界でも有数の多国籍企業であるIT業界大手です。まるで蟷螂の斧、ドンキホーテのような試みですが、自分たちは「竹やり戦術」とよんで、自分たちの、自分たちによる、自分たちのための(どっかで聴いた言葉ですが・・・)電子カルテ作成に真剣に取り組み始めました。

この自作カルテは看護師2名(1名は上級システムアドミニストレータ)とシステムプログラマー1名と私で勉強しながらオーダリングシステム(注:3)から取り組み始め、「1利用者生涯1カルテ」「法人内で共有」「診療データが取れる」「強固なセキュリティ」を合言葉にこつこつと作ってきたものです。私も、本格的にWEBプログラムを勉強して実際に書きたかったのですが、口惜しいことに時間が足りなくてできませんでした。
できあがった自作カルテは、まだまだ未完成な部分もあり使い勝手も今ひとつですが(注:4)使いながら改良していけるようにという前提でやっと使用開始にこぎつけました。
注:3薬剤の処方や検査の依頼をシステム上で行うこと
注:4未完成な部分が多いので、現在のところ販売する予定はありません。

というわけで2007年8月1日ようやく自分たちのセスナが離陸しました。

現在、この自作カルテは牧和会にある200台あまりの端末で日々動いています。今後、このカルテを改良しながら使い続け、全職員で質改善と効率化にとりくんでいくなかでいろんな発見があるのではないかと楽しみにしています。

牧和会の現在の課題と取り組み

認知症関連の老年期精神障害の治療や介護では牧病院福岡県認知症医療センターを中心に2つの方向で活動しています。
1つ目は、認知症の地域医療への取り組みです。筑紫医師会と筑紫地区の全5市との共同事業として「ものわすれ相談事業」を継続しています。これは医師会員の中で認知症の地域医療に取り組もうという先生方に認知症の診断治療についての講演会に参加してもらい、一定の単位を取得された先生には筑紫医師会からものわすれ相談医としての認定証を発行し、診療所名を医師会のHPに公開します。各自治体はこれを受けて、ものわすれ相談医の周知に努めていただくというものです。牧病院福岡県認知症医療センターではこの事業の中で医師への講演や問題事例、鑑別診断などを中心にバックアップしています。
2つ目は、利用者の相談や治療・介護においては、ご自分で受診される方の鑑別診断と程度の把握を行う物忘れ外来から重度の認知症の方まで、グループホームや介護老人保健施設、デイケア、通所リハ、認知症治療病棟などをつかって幅広く対応しています。

ストレス関連疾患では外来治療を中心に訪問看護やデイケア、心理カウンセリングを使いながら必要に応じて急性期治療病棟を使って短期の入院治療を行っています。

統合失調症関連では早期退院と長期在院者の社会復帰のためにデイケア、グループホーム、地域活動支援センターを外来や訪問看護ステーションを有機的に連携させ、安全に社会復帰ができるように取り組んでいます。
2012年から統合失調症の患者さんの在宅生活を支援するために院内で使用していた退院支援パスは外来のスタッフとある外来患者さんが一緒に作成し、その患者さんが命名した「私らしい暮らしの手帳」に結実しました。
この「私らしい暮らしの手帳」は筑紫地区の自立支援協議会で地域連携パスとして使われるようになり、同協議会では地域の治療・ケア関係者(家族会を含む)を対象にパスの勉強会を年に数回開催しています。
現在、牧病院では「私らしい暮らしの手帳」を在宅生活維持のみならず長期在院者を含む退院支援にも活用しています。

精神科救急では福岡県精神科救急システムの輪番病院になっています。また、通院中の利用者については看護ケアスタッフが24時間電話の相談を受け付けています。これ以上の救急へのかかわりを行い続けていくには大幅なマンパワーの増加が必要になるので、残念ながら現在は見合わせています。