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統合失調症の在宅治療と生活障害

治療は在宅生活のためにある。もっと言えば、在宅での治療こそ治療の本番といえるでしょう。
当たり前すぎて今更という感じですが、特に統合失調症の治療においては大事なことだと思います。また、これがすべてのご本人の基本的な願いでもあると思います。

新しく治療を始める方は外来治療が原則ですし、発病から早期に治療すれば外来治療ですみ、入院しても期間が短く(牧和会についての診療実績を参照)入院と外来は続いていると実感できるでしょう。しかし、発病から治療開始までの期間が長い場合とか、病状が重く入院が長期になってしまう場合には入院治療と在宅での生活には大きなギャップができてしまいます。それは生活上の障害です。例えば「外出してパンを買ってくるように」と言われればそれはできます。しかし、「お昼になって昼ごはんを自分で買うこと」が難しいのです。「食事をするということを思いついてお金と相談して何を買うかを決めて店に行って買う」このこと自体はなんでもないことのように見えますが、入院生活ではまるで考える必要もなく行われないことです。

統合失調症の主症状である陰性症状(自発性の低下)とあいまって大きなギャップができてしまうわけです。人によって、発病の時期によっても異なりますが、様々な生活場面でこのような障害が残ってしまいます。「病気の主症状である陰性症状とあいまって」と言いましたが、入院していなくても症状としてこのような生活障害が起こることも少なくありません。ただ、入院期間が長くなるとさらに起こりやすいといえます。

牧病院では開院以来、興奮したり幻覚妄想などの陽性症状の治療はもちろんですが、この陰性症状を治療のターゲットと考えて活動療法をリハビリとして治療の重要な軸としてきました。
昭和61年(1986年)には早くも精神科デイケアを開設し、以後福祉ホーム、訪問看護、地域活動支援センターなど様々なことに取り組んできてたくさんの人たちの社会復帰に関わってこれました。 その中で多職種が関わるチーム医療とチーム内でのコミュニケーションの大切さを学んできました。

最近では毎週、在宅カンファレンスで症例を検討し、情報を交換し社会復帰について勉強してきました。このカンファレンスには在宅支援にあたる外来や、デイケア、訪問看護やピアッツァから、また病棟からスタッフが集まってきます。病棟からも、というのは入院中からきたるべき在宅生活を目指して生活障害の治療とリハビリに取り組み入院生活とのギャップを小さくする必要があるからです。

いつも感じるのは「本人とご家族の希望が大事である」「急がば回れ」「急いては事を仕損じる」ということです。失敗して病状悪化を招かないように治療上どうしても譲れない最小限の大事なところをご本人に教えて、そこを一緒に守りながら本人の意思を大事にゆっくりと関わっていくということが必要です。

最近、社会復帰が合言葉のようにして国の方針としても強力に推し進められています。しかし、統合失調症では社会生活をすると主観的なQOL(生活の質)は落ちるケースもあるという報告もあっています。(文献『CONSONANCE〜精神科治療のトレンド〜』2005 winter(通巻第17号)ライフサイエンス出版(株) 2005年11月30日発行)それぐらい統合失調症はなかなか複雑で難しい病気といわざるを得ません。私は、その人の経験によって、つまり抱えてしまった病状によって、またそれに対するその人の取り組みによって、希望するなら入院や入所も必ずしも悪いことばかりではないと思っています。このことは、よく考えれば統合失調症に限らず病気を持つ人の生活という側面から見ると一般の病気と同じことだと思います。この事実は日本の精神科治療の歴史と現状を考えると様々な誤解を生みやすいことだと思います。精神科の病院は収容施設のように見られてきましたし、私自身が入院中心主義と言われるかもしれません。しかし、繰り返しになりますが、治療は在宅での生活のためにあります。

そして、今、いくら社会復帰が国を挙げてのスローガンであっても社会に出さえすればいいという考え方には反対です。基本的に社会生活には夢もありますが、一方では病気が始まった場所でもあり危険はあるからです。

誰でもある生活上の失敗はともかく、自分が混乱してしまうほどの病状悪化は社会的にも心理的にもロスが大きいと思います。社会生活のために、生活障害を支援するためにいままでも、そしてこれからも、私たちにできることに取り組みながら本人の意思を大事に納得できるところをともに探していく。 そのようなかかわりを行いたいと思っています。